“おかえり”ショーツをつくった理由


こんにちは、I _ for MEのプロデューサー、Ellenです。


今日は、ショーツと部屋着が一体型になったリラックスウェア、”おかえり”ショーツの開発に、私が本気で取り組む理由を、お話ししたいと思います。

江連千佳
写真: S.Wang

目次

  1. 留学で気づいた、格差を受け入れる自分
  2. 「デリケートゾーンの話はしちゃいけない」無意識のバイアス
  3. 声になってこなかったショーツへの違和感

留学で気づいた、格差を受け入れる自分

江連千佳


私は、16の時にニュージーランドへ留学しました。その時、ニュージーランドでは産休に入ったジャシンダ・アーダーン首相がいました。私は、「首相が産休をとるなんて、ありえない」「首相としての責任放棄なのでは?」と思っていたんです。


ニュージーランドでも、当時の私と考えを持った人がいて、記者会見か何かで首相に同じような質問をしました。その時彼女は、「妊娠できる体を持って生まれたからといって、どんな職業の就業の機会も制限されるべきではない」と反論していました。その言葉を聞いて、気づいたんです。自分は、「妊娠している女性が重要な役職につくべきではない」という考えを当たり前のようにインストールしていた、ってことに。


これが、ジェンダー格差という問題に初めて目が向いた瞬間でしたし、格差を受け入れていた自分を認識した瞬間でもありました。それに、ジェンダーの問題は、男性だけが問題なのではなく、当事者の女性すらも加害性を持っていたり、社会の”当たり前”にとらわれている可能性があったりするということに気がついたんです。

「デリケートゾーンの話はしちゃいけない」無意識のバイアス

生理カレンダー


帰国後、私は子宮内膜症や腺筋症といった病気を患いました。今もなお通院と服薬治療をしています。生理痛を誰にも相談できず、悪化した結果でした。「デリケートゾーンの話は、言っちゃいけない」という無意識のバイアスがあったんだと思います。自分自身の体のことなのに、何も知らず、言葉にすることすらできなかったことにショックを受けました。


「デリケートゾーンの話をするべきではない」というバイアスは、「女性は上品であるべき」とか、「デリケートゾーンや性の話をする女性ははしたない」、みたいな、「女性はかくあるべき」という考えに基づくものですよね。そう考えると、アーダーン首相の話のようなキャリアや社会の話と、生理やデリケートゾーンみたいな女性の体の話って「無意識のバイアスに囚われている」という点で構造的に同じで、繋がっているんです。


本当に女性のウェルネスを考えるのであれば、社会環境のことだけを考えるのではなく、自分自身のカラダに向き合う時間が必要なんじゃないか…そう思っていたときに降りてきたのが”おかえり”ショーツのアイディアでした。

声になってこなかったショーツへの違和感

江連千佳

YouTubeで動画を見ていたんですよね。みなさんきっと経験あると思うんですけど、その時に出てきたコマーシャルが脱毛に誘導するもので。「ショーツから毛がはみ出て彼氏に嫌われた!」っていうコンプレックス商法のものだったんです。それを見た時に、なんでパンツに合わせて自分の毛を剃らなきゃいけないんだろう?ショーツが大きくなればいいのに、って思った、それが始まりですね。ショーツの形ってなんでアレなんだろう…?って疑問を持ち始めました。


まずはいろんな人に聞いてみようと思って、ヒアリングをしたら、すごい実態を聞くことになりました。例えば、ずっと旦那さんのパンツを借りて履いていたとか、実は家ではノーパンでいるとか。「ショーツが体に合わない」という辛さを感じている人って思いのほか多かったんです。

thinking girl


でも、その辛さは、声にもデータにもなってなかった。これもなぜなのか気になってショーツの歴史を調べてみたんですけど、思いのほかショーツの形の歴史って浅かったんですよ。洋服の台頭に合わせて、明治にゆるーいショーツができて、どんどん今のデリケートゾーンに密着する形のものができていった。デリケートゾーンに近づくにつれて「性」の象徴として消費されるようにもなっていったわけです。「性」に結びつくから、女性が性について話すのははしたないから、ショーツの話題は女性の間ですら話されてこなかった。


このショーツをめぐる問題ってすごく社会的じゃないでしょうか。社会の「女性はこうあるべき」「ショーツの形はこうあるべき」という固定概念で、自分のカラダが本当に楽ちんだと思えるものを選ぶことができなかった。むしろ、見られた時に性的にみられるか、アウターに響かないか…など他人の目線を気にしている人が圧倒的に多かったんです。

relax
そんな現状を受けて、「自分のため」に選ぶ本当にカラダに負担のないリラックスウェアをつくろうと決心しました。ショーツという身近なものから、自分が無意識にかかっているバイアスに気がついたり、自分の心や体に向き合ったりするきっかけを届けたいと思ったんです。


ありがたいことに最近は「”おかえり”ショーツにハッとさせられた」というコメントもいただけるようになりました。私は、これからもとことん女性のカラダに寄り添う商品で、Homee の皆さんに“らしさ”から解き放たれる勇気を届けていきたいと思います。